「忘れられた土地」
(Days Japan 2007年8月)
「ここには何も届きません。NGO組織や他国政府からの援助がシテ・ソレイユに送られても、ここには一銭も届かないのです」
ハイチの首都ポルトープランスの街外れにあるスラム街、シテ・ソレイユ。人口30万ともいわれるこの巨大なスラム街の中でももっとも貧しいといわれるティ・ハイチ地区に住むモレナウドはこう言った。
ここの住民の大部分はブリキ板で囲われた粗末な掘っ立て小屋に住んでいる。勿論電気、水道などはひかれていない。カリブ海からこの地区に流れ込む小川はゴミと糞尿であふれかえり、豚がうめき声を上げながらそれを漁る。
田舎部から仕事を求めて首都に来たモレナウドは、13年前にシテ・ソレイユにやってきた。最も安いティ・ハイチ地区でブリキ板の小屋を購入し、現在では奥さんと子供たちの家族5人で4畳ほどのスペースに身を寄せ合って暮らしている。不定期に入る肉体労働の仕事でなんとか凌いでいるが、月平均すると一日1ドルほどの収入だ。
「時々ジャーナリストや援助組織の人間がここを訪れ写真を撮っていきます。シテ・ソレイユのなかでも、私たちの生活が一番悲惨ですから。。。」しかし、実際にシテ・ソレイユに国外からの援助が送られてきても、ここの住人たちにまでその恩恵が届くことなどまったくない、という。
ここは、貧しいシテ・ソレイユのなかでも、「忘れられた土地」なのだ。
昨年末から今年2月にかけての、ブラジル軍を主にした国連軍による武力作戦は、シテ・ソレイユを縄張りとして牛耳ってきたギャング組織をほぼ壊滅に追い込んだ。今後の動向は国連軍がどこまで関与するかにもかかっているが、ギャングによる殺人、誘拐、レイプ、ドラッグが蔓延していたシテ・ソレイユで、長年暴力に怯えてきた住人たちにとって、平和が戻ったことは喜ばしいことだ。
治安の回復したこの機会に、学校や病院の再建、道路整備などのための諸外国からの援助も動き出した。すでにシテ・ソレイユの一部では、バスケットボールコートが新設されたり、道路の舗装が始まっている。
それでもモレナウドをはじめとした、ティ・ハイチの住人たちの心境は複雑だ。
「これまでと同じように、私たちの生活環境が向上することなどないのではないか。。。 」何度も裏切られている彼らの表情は硬い。
忘れられた土地、ティ・ハイチに希望の光は射すのだろうか。
